研究概要 |
本年1月17日に発生した兵庫県南部地震による被害に代表されるように「地震時の建築物の挙動予測ならびに地震時の都市防災システムの構築」は現在最も重要なテーマであり,これは,本研究が当初より主目的としているものである。本研究で指向しているオブジェクト指向による地震防災問題の統合化はリアルタイム防災工学や危機管理問題を解決することのできる有用な道筋である。 本年度は平成5年度に導入した国土数値情報・歴史地震の震源情報・国内の活断層・名古屋市内のボーリングデータをデータベース化し,OODBMSソフトであるVERSANTを利用してオブジェクト指向の枠組みの中で利用可能なシステムを構築した。当初の予定では地震記録のデータベース化も実施する予定であったが,強震観測を行っている実施機関から年度内に記録を取得することができず,データベース化は未完の状態である。これに変わって,名古屋大学キャンバスを対象に,よりミクロな振動環境を推定することを目的として,建物構造情報,地盤情報を収集,データベース化すると共に,学内20カ所の地盤・建物の常時微動計測を実施し,微動レベルの振動記録のデータベース化を図った。さらに,振動記録をオブジェクト指向の枠組みの中で分析するツールを作成すると共に,周波数領域におけるサブストラクチャー法を活用した振動解析システムをオブジェクト指向により実現した。また,名古屋市内の80万戸の建物データを課税台帳を元にデータベース化しており,現在,住所情報と緯度経度情報とを変換するシステムを構築中である。なお,兵庫県南部地震を契機として,被害情報・新聞情報をデータベース化し,本システムに活用できるよう準備を整えつつある。このように,本研究の最終ターゲットを視野に入れつつ,各々の問題を解決すべく研究を行っているのが現状である。
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