本年度は、3次元多層建物に対する耐震壁の最適配置を効率よく求めるために、分枝限定法という最適化手法を用いて、高速な探索アルゴリズムの開発を目指した。本年度の研究により、以下の挙げる新たな知見、成果を得ることができた。 1.本研究では、3次元多層建物に耐震壁を最適に配置する問題を組合せ最適化問題として定式化し、プログラミング言語Prologを用いて探索アルゴリズムのプログラミングを行った。最適化手法として動的計画法および分枝限定法について検討した結果、本研究が対象とする耐震壁の最適配置問題に対しては、動的計画法よりも分枝限定法のほうが有効であるという結論に達したので、本年度は分枝限定法を用いた最適化手法の開発を行った。 2.各種の制約条件をファジィ化し、最適化問題をファジィ最適化問題として定式化を行い、αレベル値と最適解、最適値との関係について考察を行った。αレベル値が大きいほど最適値は増化するという、これまで一般的に言われていた特性の他に、αレベル値と最適解(最適配置)の個数にはバスタブ形状の関係があるという新たな見解が得られた。この結果は、第12回シミュレーション・テクノロジー・コンファレンスで発表を行った。 3.これまでパソコンでは、建物の規模が少し大きくなると(8層程度)、メモリの制約のために計算が行えなかったり、計算ができても非常に時間がかかる(1〜2日かかることもある)などの問題があった。しかし、本年度導入のワークステーションによりこれらの問題がかなり解消され、それによって種々の建物の試行計算が可能となった。その結果、最適化の過程の特性を把握することができ、この特性から探索アルゴリズムを大幅に改良することができた。これらの成果は、構造工学論文集、東海支部研究報告集などに登載した。 4.高速計算の可能なワークステーションと効果的な探索アルゴリズムの開発により、現在では、各層の壁配置可能位置が20ヶ所程度ならば、10層程度の建物でも耐震壁配置の最適化が可能となった。今後は、得られた最適配置の3次元グラフィック表現を効果的に行えるシステムの開発を行う必要があると考える。
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