本研究では、耐震壁の配置計画問題を対象とし、離散型最適化手法の建築構造計画への応用、適用性の考察を詳細に行うとともに、最適解探索に対する種々の効率化法の開発、検討を行った。 耐震壁の最適配置問題は、建築構造、建築計画、施工技術的な制約条件の下で、目標を最大あるいは最小にする問題であり、設計変数が耐震壁の配置位置や要素の種類など離散的変数となるので、必然的に組合せ最適化問題として定式化される。本研究では、これらの制約条件、目的関数の設定の数理的な記述を行い、さらに、実際の設計におけるあいまい性を考慮するために、ファジィ理論を用いて構造制約条件の定式化を行った。 また、本最適化問題に対する動的計画法および分岐限定法の適用を比較したが、本研究が対象とする耐震壁の最適配置問題に動的計画法を適用する際には、近似的手法を用いなければ効率よく解を求めることができず、また近似的な手法を用いることが原因で、必ずしも真の最適解が得られないということが判明したため、本最適化問題への動的計画法の適用は有効な手法ではないと判断した。従って。耐震壁の配置問題には分岐限定法を適用することとし、さらに探索効率の向上のための手法について数理的な記述を行った。 本研究では、 1.緩和式の利用、2.壁配置のグループ化、3.優越テストの利用 によって、膨大な探索空間を効率的に縮小、限定できることが明らかとなり、8層程度の建物の設計例を用いてその有効性を確認した。これらの探索規則は、「全く同じ計算は省く」、「問題を単純化して処理する」というような、人間が実際の設計の際に行っていることであるが、これらを数理的に記述することによって、計算機を用いた実用規模の建物の構造計画、壁配置設計が可能となった。
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