(1)建物近傍の、特に屋上において、大気を介しての熱流束がどのような状態にあるか。(2)地表面から上空、数十メートルから数百メートルの、いわゆる接地境界層は等流束層であるとされているが、建物の屋上での熱流束はどのようになっているか。(3)顕熱流と潜熱流は、どのような割合になっているか。を知る目的で測定を行った。 すなわち、周辺建物とほぼ同一高さの4階建ての建物の屋上において、3次元超音波風速計を用いて風速の3次元の速度変動を測り、赤外線湿度計を用いて湿度の変動を測り、微細線のT熱電対を用いて温度変動を測り、それらの結果を組み合わせて、鉛直方向の顕熱流束および潜熱流束を求めた。 その結果、1)晴天日において、顕熱流の時間変化は、正午過ぎの付近で最も高い値をとり、夜間はほとんど0に近い値となっている。2)顕熱流の鉛直分布は、午前中は1.8m、3m、6mと高度が上がるにつれて顕熱流が大きくなり、午後は高度によってばらつくが大きく、夜間は高度による差は非常に小さくなった。3)日中の全天日射量と顕熱流との間には明確な相関は見られない。4)日中の全天日射量と潜熱流との間にも明確な相関は見られない。5)潜熱流の鉛直分布については、午前中は、高度6mのところで潜熱流が最大値を取る傾向があるが、昼間には大きな分布がみられ、夜間はほとんどばらつきがない。6)顕熱流と潜熱流はほぼ比例関係にあり、その比、ボーエン比はおよそ5であった。
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