昨年度の引き続いて、(1)建物近傍の、特に屋上において、大気を介しての熱流束がどのような状態にあるか。(2)地表面から上空、数十メートルから数百メートルの、いわゆる接地境界層は等流束層であるとされているが、建物の屋上での熱流束はどのようになっているか。(3)顕熱流と潜熱流は、どのような割合になっているか。を知る目的で測定を行った。昨年度は冬季の測定であったが、今年度は夏季および秋季に測定を行った。それにより、昨年度より一般的な結果が得られた。 測定方法および解析方法は昨年度とほぼ同様であるが、乱流の組み合わせ計算に用いる変動気温には、微細線のT熱電対を用いる昨年の方法が、ノイズを拾いやすくて解析の信頼性に欠けるため、超音波風速計で測られる風速の値を用いた。 得られた成果は次のとおりである。1)建物屋上6.0mまでの空間では、熱流に高さによる違いが存在する。高さ1.8mでは屋上表面の影響が強く、高さが増すほど、その傾向は薄れ、高さ6.0mでは上空を吹く気流の影響のほうが支配的で、個々の建物の形状の影響は薄れる。2)熱流束の季節差は、経時変化に顕著に現れる。風速が大きい夏季には、午前中から高さ6.0mで大きな値となるが、秋季には風速は小さく、高さ6.0mでの熱輸送は夏季の熱輸送ほど活発ではない。3)ボウエン比は高さによって値が異なり、季節差は見られない。
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