本研究は、従来からある住民の施設選択モデルを中心とした施設計画手法に対して、施設側の立地行動と住民側の施設選択行動の均衡の結果として施設利用パターンが形成されるという認識の上で、施設立地行動と施設選択行動をそれぞれモデル化することにより、将来の立地動向をシミュレーションすることを目的とする。 具体的には、高度成長期以降の日本の一地域を対象にして、施設の立地行動と住民の施設選択行動の経年的変化のデータを収集し、各時点におけるシミュレーションモデルを構築することで、自家用車の普及や道路網の整備による施設近接性の改善、所得水準の向上、冷蔵庫の普及による買い物頻度の変化などの社会経済的な変化と施設立地性向の対応を分析するとともに、立地行動のモデル化に必要な諸パラメータの推定をおこなう。 研究の初年度は、事業所統計などの統計に基づき、過去の商業施設の立地動向についての資料を収集した。また、民間機関によって行われた住民の買い物行動調査から、住民側の資料を収集した。 本年度は、まず、収集したデーターをもとに、モデルを開発するプラットフォームとして、ワークステーションを用いた地理情報システムにこれらの資料を入力して地域データベースを構築した。次に、そのデータベースを用いて、小売施設の立地性向について時系列的な分析を行った。また、その成果を日本建築学会計画系論文報告集に発表した。さらに、上記モデルにより得られた仮説に基づいて、消費者の行動パターンの変化を要因とする施設立地性向の変化をシミュレーションの手法によって検証する作業を行った。
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