昨年度の研究では、各種組成比のTi-Ni形状記憶合金薄膜をRFマグネトロンスパッタリング法により作製し、溶体化処理と時効処理を行い、変態温度と記憶特性を含めたアクチュエータ機能の多様性を実現するのに成功した。また、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、EPMA、透過型電子顕微鏡等を用いて、膜の表面と内部組織の状態を明かにすると共に、組成分析を行った結果、均質な膜が作製できたことが確認できた。本年度は、膜の高純度化を行い、2元系合金のみならず3元系合金の各種組成の薄膜を作製することに成功した。高純度化の結果、高い変態温度が実現できた。例えば、2元系合金の変態および逆変態温度がそれぞれ333Kおよび360Kであり、これはバルク材の変態温度とほぼ同じ値である。また、第3元素としてCuを添加した合金薄膜では、変態温度ヒステリシスの小さい特性を実現できた。さらに、第3元素としてPdを添加した合金薄膜では、変態および逆変態温度がそれぞれ385Kと401Kとなり、2元系合金よりも高くすることができた。これらの、小さい変態温度ヒステリシスと高い変態温度は、アクチュエータの応答性を高くするために必要な特性であり、高機能のアクチュエータ素子が開発できたことになる。
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