研究概要 |
本研究の結果,以下の諸点について新しい知見が得られた: (1)P型およびN型縮退基板上のポーラスシリコン(PS)の微細構造の類似性の検証: (イ)P型とN型の縮退基板上のポーラスシリコンの微細構造は本質的に類似している. (ロ)N型は細孔形態の異なる多層構造であるが,P型表面から界面まで均一な細孔構造を示す. (ハ)N型PSでは表面部分の細孔表面部に多量の微細Si粒子が生成している,このため,レーザー照射による発光強度はN型PSの方が表面部分で著しい. PSの結晶完全性の実験的検証:縮退基板上のポーラスシリコン層は,P型のものはN型のものより高い結晶完全性を示す.一方,N型PSは形態の異なる多層構造となっており,それに対応するX線ロッキングカーブを示す.格子ひずみは,基板から剥離すると基板による拘束を免れるため多孔質シリコン薄層は全体でひずみを緩和し,半値幅は著しく広がり,微細構造が破壊されモザイク性が出現する. (3)平均細孔/残留シリコン部サイズの制御:縮退基板シリコンを用いると,電圧・電流密度を精密制御することにより反応時間によって残留シリコン部のサイズを制御できる.このことは,ホ-ラスシリコンをヘテロエビタキシャル成長用のバッファー層としての利用を示唆する. 以上を総括すると,本研究の達成度と今後の課題について次のことが言える: (1)当初の研究目的のポーラスシリコンのサイズ制御は縮退基板を用いることによりほぼ達成できた. (2)可視発光に関与すると思われる微細シリコン粒子のサイズおよび分布の制御は反応条件をより詳細に分析し,より厳密な規定する必要がある.N型では反応時の光照射の有効利用が考えられる. (3)ポーラスシリコンの微細構造の直接観察に有力と思われた高分解能電子顕微鏡による結晶構造像の観察は,観察試料に作製方法の選択で結果に相違があることがわかった.今後の構造評価の課題である.
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