研究概要 |
高温・高水素圧下における金属の水素化過程を追求した結果、以下に述べるように、通常の金属中での熱平衡値をはるかに超えた多量の金属原子空孔を生成する全く新しい過程が見いだされた。 1.Pd,Ni.Cuを高温・高水素圧下に保持すると、試料表面から内部に空孔が導入され、Pd,Niについての空孔濃度は14-18at.%に達することが分かった。また、PdとPd-Pt合金においては、空孔の秩序配列によるX線の超格子回折が見いだされた。 2.Niの回収試料を脱水素した後に高温で焼鈍して顕微鏡観察をしたところ、多くの空孔が凝集してボイドを形成し、試料全体がスポンジ状の組織になった。 3.Pd-Rh,Pd-Pt合金では高水素圧下で極めて短時間に相分離が起こる。これは多量の空孔生成によって拡散係数が約5桁大きくなったためである。 4.その他の金属-水素系(Mn-H,Fe-H,Ti-H,Zr-H)についても高温・高水素圧下で空孔生成によって誘起されたと考えられる新しい相が見いだされた。とくにTi-H,Zr-H系では従来は知られていなかった高水素濃度相(〔H〕/〔M〕>2)の存在が見いだされた。 高温・高水素圧下で金属水素化物中に生じた金属原子空孔は常温・常圧に回収した後に水素を脱ガスしても凍結されたまま存在するので、このことにより空孔を多量に含む新しい構造の金属を代表を作成する一般的方法がえられたことになる。今後は、この水素化による多空孔金属の生成に関して、さらに多くの金属についての実験を行い、その機構と、それによって発現する物性を調べていく予定である。
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