研究概要 |
当初の目的と計画にもとづいて研究を遂行し、ほぼ所期の目標を達成することができた. 研究目的は筆者らが見出した「原子空孔生成を伴う水素化」という新しい水素化機構を追求することによって高水素圧下で生成する相を常圧に取り出す方法を開発することであり、そのために主として高温・高水素圧下でのX線回折により多くの金属-水素系について多量の空孔生成の過程を調べる計画であった. 本年度は昨年度からの継続課題であるPd,Ni,Ti,Mnに関する詳細な実験をほぼ完了し,さらにCo,Zr,Rh,Au,Pt中での空孔生成過程について新しい知見を得ることができた.またPd-Rh,Pd-Pt合金では空孔生成に伴う金属原子拡散の促進が見出された.これらのうちPd,Ni,Ti,Mn,Pd-Rh合金についての結果は11月にわが国で開発された金属-水素系に関する国際会議で発表を行い、多大な関心を集めた. 我々が発見した「多量の原子空孔生成を伴う水素化過程」あるいは「水素化物相における多量の原子空孔生成(superabundant vacancy formation)」は、本年度の研究成果発表によって漸く広く認められることになったと言えよう.今後はその機構の解明,結晶構造への依存性,それに伴う物性の変化など,多角的な研究を進めて行く予定である.20at.%にも及ぶ多量の原子空孔を含む金属は全く新しい物質であると言ってもよく,多くの新しい物性の発現が期待される.
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