(1)Biを拡散したSrTiO_3系セラミックスの粒界構造 本来絶縁体であるSrTiO_3を強制還元すると酸素空孔の生成によりn型半導体になる。そのように半導体化されたSrTiO_3を酸素存在下で熱処理すると非線形な抵抗の電圧依存性、いわゆるVDR効果が発現する。ところで、Bi_2O_3を熱拡散させ粒界絶縁性を計り高い見かけの誘電率を持たせた素子はBLコンデンサとして利用される。しかし、VDR効果に直接に関係する粒界障壁に対して詳細に調べた例はない。そこで、Bi_2O_3を熱拡散させたときに障壁で起こる変化を非拡散の場合と比較し、定量的に調べた。その結果、Bi_2O_3の拡散により粒界構造をコントロールすることにより非線形係数alphaなどの電気的特性を制御できることがわかった。特に障壁の高さ(PHI_B)および界面準位密度(N_i)とドナー密度(N_d)の比((N_i/N_d)が熱処理温度に対しalphaと同様な振舞をするので、これらのコントロールが性能改善に重要であることがわかった。 (2)ZnO系バリスタにおける積層界面 Pr系ZnOバリスタは、高い非線形電圧-電流特性を持つことで知られている。近年、低電圧における過渡サージ保護素子の開発という観点からPr系ZnOバリスタの粒界の1界面を積層薄膜として作製するという、興味深い研究がなされている。ここではCoOを添加したZnO膜の上にPr_6O_<11>膜を積層させ、CoO添加ZnO/Pr_6O_<11>なる接合界面を作製し、非線形特性の発現機構を調べた。その結果、空乏層がCoO添加ZnO/Pr_6O_<11>界面に形成されバリスタ機能が発現していることがわかった。また、Ni/Zn(CoO)/Pr_6O_<11>/Au構造のバリスタで、alpha=12.2、V_<0.1mA>=6.5Vという良好な低電圧特性が得られた。
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