本年度の研究は補助金申請書に書いた研究実施計画のとおりに達成された。それらをまとめると、次のようになる。 1.試験片の作製 申請者らが開発した高純度電解鉄(99.995%程度の純度)に高純度の鉄-炭素、鉄-リン、鉄-ボロン母合金および硫黄を用いて、炭素とリンについて1ppmから0.1%、ボロンと硫黄について1ppmから50ppmの濃度範囲で制御添加した鉄合金の5kgインゴットを高真空高周波溶解により溶製した。それらのインゴットを制御された雰囲気中において加熱した後熱間鍛造、熱間および冷間圧延し、機械加工により引張試験片をはじめ各種の試験片を作製した。それらの試験片について精製水素中または高真空中で熱処理を施して、組成および組織を制御した。 2.試料の分析 試験片作製の各過程で各合金に対し約30元素について0.1ppmオーダーの微量分析により純度を測定した。その結果、鉄の高温延性に及ぼす各元素の本来の影響を調べるのに十分と思われるほどの高純度試験片が作製できたことがわかった。すなわち、添加元素以外の不純物元素は酸素を除けばいずれも5ppm以下である。酸素も高々10ppm程度である。また、これらの添加元素はppmオーダーで制御添加できることもわかった。 3.高温引張試験用超高真空チャンバの作製 到達真空度10^<-10>torr台、引張試験中の真空度10^<-7>torr以上のオーステナイト系ステンレス鋼製高温引張試験用超高真空チャンバの試作ができた。チャンバ中で室温から1000℃程度の温度範囲で急速加熱が可能で、荷重は±100g/mm^2以上の精度で制御可能である。
|