研究概要 |
本年度の研究は補助金交付申請書に書いた研究実施計画に従い行われた。それらをまとめると、次のようになる。 1.高温引張り試験 平成5年度の科学研究費補助金で作製した高温引張り試験用超高真空チャンバーを試験機に取付け、平成5年度作製した高純度鉄合金(Fe-S,Fe-P,Fe-S-P,Fe-S-B合金)の試験片を10^<-8>torr台の超高真空中において広い温度範囲で引張り試験を行った。引張り用チャンバー内の真空度が極めて高いために試験片の酸化が全く認められなかった。このような引張り試験の結果より鉄の高温変形に及ぼす硫黄、リンおよびボロンの真の影響を明らかに出来た。 2.組織の観察と破断面の解析 変形前、高温変形途中および破断後の組織を光学顕微鏡で観察し、金属組織に対する各々の溶質原子の影響を調べた。また、破断面を走査電子顕微鏡で観察し、破壊様式と溶質原子の種類、量および変形温度との関係を調査した。さらに結晶粒界と高温変形途中に形成したボイドの表面に偏析した溶質原子の量と状態などをオージェ電子分光破断面微小分析装置を用いて解析した。 3.データの解析 上述の実験で得られた結果を総合的に解析・比較し、鉄の高温変形に及ぼす各々の溶質原子の影響の機構を考察した。これらの研究の成果のうち、鉄の高温延性に及ぼす硫黄の影響に関する部分を平成6年5月に北九州市で開催された国際会議、First International Conference on Ultra High Purity Base Matals,UHPM-94において発表し、近いうちに論文として公表される。リンの影響に関する研究は平成7年6月にフランスで開催されるUHPM-95にいて発表する。他の研究成果も論文としてまとめている。
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