研究概要 |
実験の準備:押出し実験用サブプレスおよび押出しダイ,マンドレルなどの設計,外注製作と,パソコン(購入)を用いた押出し荷重-ストローク曲線の記録システム,加熱炉(自製)および温度制御器(購入)を用いた温度制御システムの構築は完成した. 実験の実施:これまで,主としてC3771(鍛造用黄銅)を用い,押出し温度650〜750℃,押出し比10〜20,押出し速度10mm/minでパイプの成形実験を行ない,押広げ試験,接合面付近の光学顕微鏡観察,押広げ破面のSEM観察,EDX分析などにより成形品の接合状態を調べてきた.その結果,所定の押出し温度までの加熱を大気中で行なうと素材の表面層の激しい酸化により成形されたパイプは押広げ率が比較的に低く,製品として十分な接合強度があるとは言えない.ところで,加熱をアルゴンガスを用いた雰囲気で行なうと,押出された製品は接合状態が著しく改善され,C2000系銅合金についてのJIS規格以上の接合強度を有する.ビレット加熱過程においての表面酸化防止対策,あるいは生成した酸化皮膜を有効に除去することにより,熱間多素材押出し法で健全な銅合金中空品を成形できることが分かった. 理論解析:上界接近法を用い,パイプの成形過程について数値解析を行ない,押出し所要力,最適ダイス形状寸法などについては実験とよく一致する予測結果が得られた.これらの結果は今後の実験条件選び,ダイ設計によい指針となる. 経費の制限で実験内容の一部は減らした(平成5年度科研費の実際配分額は申請額より少なくなった)が,研究全体には大きな支障がなく,ほとんど当初の計画通りに進んでいる.上述のようにいままでの結果から期待した主な研究目的の達成が可能であると思われる.
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