備品として購入した超高真空対応ホットプレートを含んだ電場援用接合装置の設計を行い、その超高真空装置への組み込みを行った。印加する電圧は数100Vから1kV、加熱温度は約300℃である。 接合実験としては、アルミニウム-シリコンの常温接合を行った。その結果、高真空中でのアルゴンFAB照射により常温接合が可能であることが明かとなった。接合強度は引張りで20MPa程度である。さらにこの際の表面活性化の条件として、超高真空中での差動排気によるアルゴンFAB照射直後の接合、水素ラジカルビームの照射等との比較を行った。その結果、いずれも接合は可能であるが、前者で最も接合強度が高く30MPaを越え、また後者では弱い強度しか得られないことが分かった。残留ガスならびに照射後の表面の吸着層を質量分析、オージエ電子分光を用いて調べた結果によれば、水素RBの照射により水が増加し、この吸着が接合強度の低下に関与していることが分かった。従来の高温でのアルミニウム-シリコンの直接接合では水の関与を積極的な必要条件としている。これに対し、真空中で水の関与なしにまず両者が常温で接合可能であること、さらに、むしろ水の吸着が接合を阻害するという従来の手法による結果とは全く逆の新しい現象が確認され、この常温接合が従来とは異なる手法であることが示された。この結果は、電場による静電引力を援用することによる異種材料間のウエハボンディング低温下実現の可能性を示していると考えられる。
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