研究概要 |
本研究では,現在保有しているAFMをイオンスパッターの行える超高真空排気システムに組み込み,いくつかの固体間に働く結合力を計測する.そして,理論計算から推定される電子状態と結合力の関係を明らかにするのが最終目標である. 研究分担者・高橋が中心となり,現在保有している原子間力顕微鏡(AFM)をイオンスパッターの行える超高真空排気システムに組み込みこんだ.その際,以下の点に留意した. 1)10^<-9>Pa台の超高真空を維持するため,装置はすでに完成している疑似クリーンルームに設置した.超高真空部を大気リークせずに計測と試料交換を行うため,ロードロックシステムを取り入れたチャンバーを設計した. 2)イオンガンは差動排気型を用い,作動ガスはアルゴンかキセノンを用いた.これらのガスの排気を考慮して,ノーブルポンプとチタンゲッターポンプを用いた. 半導体トランスディューサーを用いた結果によると,表面原子間の結合力が固体間の結合力の原因となっている場合があることがわかった.すでにできた界面に対するオージェ価電子分析によると,界面近傍の化学結合状態は熱力学データだけからでは予測できない場合があることが示唆された.申請者らは,その原因を界面近傍の電荷移動から説明するモデルを立てた.電荷移動を考慮した電子論計算では,単純金属の表面エネルギーを予測することができた. すでに形成された界面近傍の化学結合(原子間相互作用)状態を計測でき,これから接合する固体間に働く結合力を計測し,これらの実験事実を電子状態の観点から分類できれば,接合界面における材料選択のあり方に対し明確な示唆を与えることができる.また,潤滑は接合と正反対の現象であるので,潤滑界面に対する材料選択のあり方にも有益な示唆を与えることができると考えられる.
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