研究概要 |
異種固体材料間に働く結合力は,接合の本質である.近年,それを第一原理からの量子力学計算で計算しようとする試みがなされている.しかし,いかに自己無撞着な計算を行おうと,基底関数の選び方が計算結果の精度や真偽を左右するなど問題は多い.界面における材料選択や接合プロセスの選択を合理的に行うためには,むしろ,材料間に働く結合力を実際に計測することが不可欠である.原子間力顕微鏡(AFM)は,プローブと試料との間に働く子間力を計測,制御し,表面の原子配列などを調べる装置である.この装置を利用すれば,任意の材料間に働く結合力を高い精度で計測することが可能となるはずである. そこで本研究では,現在保有しているAFMをイオンスパッターの行える超高真空排気システムに組み込み,いつかの固体間に働く結合力を計測する.そして,理論計算から推定される電子状態と結合力の関係を明らかにする.研究分担者・高橋が中心となり,現在保有している原子間力顕微鏡(AFM)を超高真空排気システムに組み込みこんだ.しかしまだイオンスッパタ-システムが完全に動作しないのでシステムを完成させる.その結果,システムの不備は超高真空用のノ-ブルポンプに有る可能性が高い事が分かった.この排気システムとの干渉を考慮してシステムを完成させていくひつようがあることがわかった.また,弾性連続体におけるモデルによる検討も行い.固体間相互作用の基礎的な知見が得られた. AFMのチップと試料の相互作用には接触部の相互作用だけではなく,その周囲の表面同士の相互作用が重要であることが示された.また,その相互作用が無視できる領域との境界を明らかにできた.さらに計測系の剛性も計測結果を全く違う形に見せる要因となることもしめし,その機構が働く領域を界面エネルギーなどから推定できることを示した.USAやUKの研究者の計測結果もこれらの観点から矛盾無く説明できることが,世界で初めて,示された.
|