研究概要 |
鉄鋼材料の多くは平衡状態では包晶反応を伴う。これらの材料においては,凝固時に生じる様々の現象は,2つの高温相δおよびγの生成に直接あるいは間接的に関係し、δあるいはγ相の選択は組成のみならず凝固速度によっても影響されることが定性的によく知られている。本年度では晶出する相および組織形態がどのように選択されるかについてデンドライト成長理論をFe-Ni,Fe-Cr-Ni系に適用し定量的に検討した。また近年発展の著しい希土類磁石・高温超伝導材料などにおいては所要の特性を有する相は包晶反応によって生成する。これらの相は金属間化合物であり,一定の組成のまま凝固を完了する。鉄鋼材料などと対比して,包晶反応時の相選択を検討した。 デンドライト先端界面温度,T_d^*,はKGT(Kurz,Giovanola and Trivedi)モデルによって求めた。過冷度が小さい場合には近似解析解が求められる。先端曲率半径Rは‘stability criterion'によって決定できる。またi相の先端デンドライト温度Vが小さくセル組織の場合には温度勾配G=0とし,Vが大きくセル・平らな場合には分配係数kのV依存性をAzizの式によって評価して,それぞれ先端界面温度を計算した。なお,先端界面温度の高い相が選択されるとして解析した。 本解析手法によってステンレス鋼におけるδ/γ選択生成による表面割れ、溶接割れなどの現象,ならびに希土類磁石・高温超伝導の相選択への理解が深められると期待される。
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