本研究は宇宙構造物に対する人工破片(デブリス)の衝突からの防護に関するものである。防護方法はWhippleバンパーと呼ばれる主壁の前方にバンパー板を置く方法を採用した。デブリス衝突速度が秒速5km以上の場合、バンパー材とデブリスの破片からなる2次デブリスは液化又は気化するために主壁への損傷の程度は大きくない。本研究は主壁へ深刻な損傷が予想される固相2次デブリスが発生する5km/s以下の速度領域で有効なバンパー板の開発に関するものである。 衝突実験は直径1mm、密度5.1g/cm^3のMnAl球をバンパーモデルに秒速3〜4kmで衝突させることによって行った。バンパー板と主壁モデル板の間隔は50mmとした。主壁モデル板の上に複数の事務用紙とカーボン紙を交互に重ねて置いた。厚み1mmの2024A1合金板と厚み1mmのA1N焼結体のプレートを組み合わせたバンパー板についての衝突実験を行った。2次デブリスの主壁上での分布を記録紙上の痕跡として監察した。バンパー板から吹き出す2次デブリスの様子を自作したフラッシュ発光装置を使用して高速写真撮影した。 実験結果を総合すると、秒速2km以上の衝突速度では、バンパーがA1合金の場合、固相破片が発生して記録紙上にスポット状の損傷を与えた。A1Nの場合、2次デブリスは粉末状のもので主壁に与える損傷の程度は小さかった。バンパー板の厚みと衝突速度が適当な条件下ではリング状の2次デブリスパターンが観測されたことは今後の興味ある課題である。本研究によって固相2次デブリス抑制型バンパーとして、前面にアルミ合金後面にA1Nセラミックスの複合バンパーの有効性が明らかにされた。
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