接合部近傍に発達する3次元剥離渦内の乱流構造を知るために、以前行った平板境界層と翼端渦の干渉流場についてトリプルワイヤー型熱線流速計を用いて計測を行った。その結果以下のことが分かった。 (1)翼端渦の中心近傍は翼の境界層を巻き込むための速度の低下が認められる。しかし、その領域は渦の影響を受けた領域全体に比べ無視できる。 (2)縦渦により境界層の内側から外側に引き出された流体の乱れ強さは、それまでの乱れの性質を保存し、周囲の流体に比べると乱れ度も多少大きく、せん断応力成分もそれにつれて大きい。 (3)縦渦により境界層の外側から内側に引き込まれた流体の乱れ強さは、境界走外端部周辺の流体と同程度である。しかし、せん断応力成分は極端に小さく、乱れの等方化が見られる。 以上の結果より、3次元剥離を含む境界層の乱流モデルの一つとして提唱されているBoldwin-Lomax法に、縦渦の強さによる減衰係数を導入するモデルを考察した。この考え方は、回転流成分を持つ円管内流れのせん断応力が低下する性質も説明できる。 次に、肥大船の船尾近傍の乱流場を計測した結果、以下の事柄が分かった。 (4)水面近傍の乱流構造は、平板境界層的性質が強い流れ場である。 (5)船尾伴流中心近傍の乱流構造は円柱後方の流れに近い乱れの強い流れ場である。 (6)3次元剥離渦の外側部分では速度勾配の大きな領域ではレイノルズ応力が大きいなど、通常の境界層に近い流れ場である。 (7)3次元剥離渦の内側部分でのレイノルズ応力は小さいが、速度勾配も小さいため実験的に渦動粘性係数を求めることは難しい。適当な関数近似等の手法が必要である。 ポテンシャル流面を用いる厚い境界層の解法において、縦渦成分をより詳細に表現するために2次流れの表示法を改良した。その結果、(8)3次元剥離渦が強くなりすぎ、断面内の流れの連続性が保たれなくなった。現在改良中である。
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