近年、農業について、従来の生産性一辺倒の評価から、農業が有する環境保全機能、いわゆる他面的価値をも評価しようとする動きがある。その一方で、農業自体が環境に対する負荷となっていることも多い。本研究は特に農業流域河川の水質特性を解明することによって、流域保全のための基礎的資料を集積し、農業・農地が環境へおよぼす影響、またその他面的機能の評価をおこなおうとするものである。 平成5年度は、土地利用状況の異なる農業流域と、これらに対照させる林地流域において、水質水文に関する調査を開始した。すなわち、北海道内の農業流域のうち、石狩管内の水田流域、上川管内の畑作流域、根室管内の酪農流域に、それぞれ観測点を設置し、降水、流出、SS、電気伝導度(EC)などの連続的な観測をおこなった。また、リン、窒素、浮流土砂などの負荷量の解析を現在すすめている。 これまでECについては、林地流域などで降雨出水時における濃度低下が知られていたが、今年度の観測により、畑作流域における出水時の濃度上昇が頻繁にみられ、負荷塩類の流達が示唆された。酪農流域河川でも河川形態によってEC変化に相異がみられ、自然河川流域よりも改修河川流域でより高いEC値が観測された。このことは流路形態が負荷の流達性に違いを生じることを示唆している。 浮流土砂流送特性についても、土地利用によって明確な相異があらわれた。たとえば、出水時の河川ピーク比流量と比負荷の関係では、畑作流域でもっとも負荷が発生しやすく、ついで酪農、水田流域の順となった。また流域内にしめる林地面積とも相関がみられた。 今後、特に積雪寒冷地の水循環のなかで無視し得ない融雪期のデータなどを中心に、調査・検討を続けていく予定である。
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