木曽三川の沖積作用により形成された豊かな濃尾平野における、都市部の無秩序な拡大を主因とする多くの問題の内、最も重要な水環境の悪化に対する農村側での取り組みとして期待される、農業集落排水施設の導入効果について研究を継続した。 先ず、本施設の物理的な汚濁物質の負荷軽減作用だけでなく、農村居住民の地域環境改善への意欲を高め、ひいては周辺地域からの各種汚濁水の流入による農業用排水の水質悪化を防止する、広域対策の実施への方向性を追求した。対象地として、木曽三川下流域に分布する輪中群の中核的な位置を占める、高須輪中地区を中心として水環境の経時的変化に関する調査を継続し、今後さらなる改善への努力の傾注が必要であるを確認した。同時に、高須輪中地区の最上流部に位置する平田町にて水路の水質調査を行い、現状の汚濁負荷の高さを実証すると共に、同町で計画・施工中の排水処理施設が早期に稼動を開始する以外に抜本的な対策がないこと、さらにそこへ至るまでの水質調査の継続が重要であることを認めた。 農業集落排水施設の導入効果の検討に際し、処理機能に特徴を有する全国の処理施設を対象に、機能と維持管理に関する調査を継続した。その結果、現在一般的に行われている運転管理のレベルでは、十分に設計処理機能が発揮できない状況が多く生起していることが分かった。また、これから着工ないしは供用開始が予定されている施設において、その処理能力の問題故に、将来間違いなく強化される排水基準とどう整合性を保つかということも今後の重要な課題である。本低平地帯が排水の終着駅たる環境は以後も永劫に続くため、本排水施設の導入効果の高さと、その機能の維持管理の重要性とを強く認識した。
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