研究概要 |
房総半島の海成侵食段丘面下の風化帯や秩父盆地の河成侵食段丘面下の風化帯についての物性変化の計測を精力的に行った.すなわち,(1)まず野外において,離水年代が既知の,秩父地方の荒川の河岸段丘や,房総半島の海岸段丘上で,未風化の基盤岩石(主に,砂岩・泥岩・凝灰岩などの堆積岩)からその上部に形成されている表層風化岩までの一連の現場物性測定(弾性波伝播速度,土壌硬度,シュミットロックハンマー反発値,現場透水試験など)を行うとともに,それぞれの岩石の試料採取を行った.(2)野外で採取したこれらの試料を実験室に持ち帰り,それぞれの密度,比重,弾性波伝播速度,透水係数,間隙径分布,比表面積などの物理的物質,一軸圧縮強度,引張強度などの力学的性質,薄片観察やX線回折分析,電子顕微鏡などによる鉱物学的性質,EPMA(X線マイクロアナライザー)や蛍光X線分析などによる化学的性質などを計測した. これらの測定の結果,以下のことがわかった. (1)風化帯は,野外観察や間隙径分布などの物理的性質などをもとにすると,おおまかには,強風化帯・中風化帯・弱風化帯とに分けられる. (2)風化層厚(Z)と風化時間(t)との間の関係は,Z=αt^βと表され,ある地点における風化速度は,時間の経過とともに徐々に減速する. (3)各風化帯の層厚は,風化時間だけでなく,未風化部の岩石物性や地形・水文・気候条件などの風化環境にも大きく影響されている.
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