研究概要 |
前年度の研究成果に基づき,室戸岬付近の海岸段丘の写真判読とともに,現地の耕地整理組合に残されている区画整理前の大縮尺地形図を利用することによって,詳細な地形分類図を作成した.この結果,室戸岬地域の段丘地形は従来知られている以上に細かく区分でき,従来,ひと括りされている段丘面は細分可能であることが明らかになった.また,これらの段丘面上において火山灰試料を採取したところ,火山灰は段丘面と密接な関連を持って特徴的な推積構造をもって分布していることが明らかになった.また,段丘面を刻む谷床部にも段丘推積物があり,それらと火山灰の関係も明らかになった.この様に,この地域で従来全くてつかずの分野である火山灰編年による段丘地形編年の可能性が高まった.また,これらの火山灰は,調査地域に第四紀火山の存在しないことから,広域的な対比が必要である.また,これらの火山灰はいずれもガラス質で類似した記載岩石学的特性を持っているので,その対比には化学組成の測定が必要である.そこで,島根大学汽水域研究センターのEPMAを使用して科学組成を測定し,その対比を検討中である. そのほか,環境変遷と地形発達の関連をあきらかにするため推積物の物理的性質の把握,花粉化石の組成の検討を行ないつつある. 以上のように日射量変動と地形発達の関係を明らかにする本研究は急速な上昇が知られている室戸岬付近の海成段丘群において界面変化と火山灰・推積物の特性との関連から進行中で,第四紀中・後期の段丘地形の形成に及ぼす日射量変動の影響を解明しつつある.
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