研究概要 |
本研究では,地理的に分散した状況下での協調学習(グループ学習)を支援するシステム構築と,そのような環境におけるコミュニケーションの過程を通じて,他者との関係から自己アイデンティティがどのように芽生え,変容していくかを分析することを目的とした.これらの目的を達成するために,分散的に配置されたワークステーションを用いてCSCWの基盤を開発し,その上で,グループ学習を実現する作業環境と,議論の状態を認識し,議論の展開に関して助言を与えるシステムを開発をした.その際,問題解決のための議論の支援を行なうための汎用な対話展開モデルの構築を行なった.このモデルは,実際の協調問題解決における議論を認知科学的に分析することによって提案されており,本システムはグループ学習支援システムの汎用なフレームワークとなっている.システムは各学習者に個人作業環境と協調作業環境を提供する. 協調作業環境では,提示された課題について議論が行なわれグループとしての意見が作成されていく.ここでの議論は議論支援システムによって円滑化が図られる.また,作成されたグループの意見については,学習領域の知識を実装したエキスパートシステムがこれを認識・診断し,問題解決に関して助言や指示を与える. 本研究では,学習領域として初等幾何学の定理証明を設定し,本研究室で開発された幾何論証ITSを拡張して協調作業環境に組み込み,具体的な学習環境を実現した。 この環境を用いて実験を行ない,システムの評価と自己アイデンティティの形成過程に関する分析を行なった.これにより,協調学習の過程での自己の役割の認識,提案・主張の妥当性の認識,問題解決場面における状況の変化の認識,自己の考え方の変化の認識等に対する知見が得られた.
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