研究概要 |
本研究では,視覚系の基本的な機能の一つである,運動物体の発見・追従の数理的モデルを構築し,視点・視野の決定・制御問題の最適性を議論した. モデルの概要は以下の通りである.物体の認識を,物体の属性を記述するパラメータを推定するための,視覚パターンの観測過程ととらえる.すなわち,雑音像の重畳した対象物体の画像を,視点・視野を持つ観測系により観測し,対象物体の位置と大きさを最小分散推定により推定する.最適な視点・視野の決定・制御問題は,対象物体の位置や大きさに関する事前の情報に基づいて,推定誤差を最小化する観測システムを構成する問題として定式化される. 提案したモデルには次のような特徴がある. 1.多くの生物の視覚系が,発生学的な起源が大きく異なる場合であっても,機構が極めて類似しているという事実をふまえて,さまざまな生物の視覚系に共通する特徴を一般化したものをモデルとした. 2.本モデルは観測系,最適な視点・視野の決定・制御等が数理的に記述されており,視覚系のより複雑な機能へとモデルを拡張してゆく際に整合性を保つことができる. 3.モデルが,シーンの多様さに対する頑強性を有していることを示すには,実環境下でリアルタイムで動作するシステムを作ることが望ましい.したがって,モデルの動作に要する演算量が原理的に少ないことが望ましい.本モデルにおいて,対象物体の位置や大きさを推定するのに要する演算量は比較的少量であり,本モデルに基づくリアルタイムで動作するビジョンシステムを容易に実現できる.
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