研究概要 |
本研究では,視覚情報に基づく空間認識すなわち環境内の物体の形状や配置などの3次元情報の獲得に関する諸問題の解決を目的とした手法の開発ならびにシステムの設計開発を行った. 人間は物体の可視部分の形状から,類似物体に共通する性質に基づいて遮蔽部分や裏側などの不可視部分の形状を予側し,対象物体全体の形状を推定できる.このような能力は計算機科学の分野で知的処理と呼ばれる,類推や仮説推論などの高次推論の一種である.高次推論は主に記号論理の世界で定式化が図られてきたが,一般に画像はパターン情報であるため,記号世界とは別の枠組みが要求される.我々は正則化(評価関数の最適化)が視覚情報処理における仮説推論の定式化の枠組みとなりうることを主張し,不可視部分も含めた対象物全体の形状予測復元システムを開発した. 上記システムにより不可視部分の予測がある程度可能となったが,これはあくまで予測であるため実際との不一致が生じる部分空間や,可視部分の情報が少なすぎて部分的に予測不可能な部分空間も当然生じる.このような場合に能動的に視点移動を行い効率的に情報を獲得するための戦略についても検討した.観測位置や移動経路は予測に基づいて作成される環境地図に基づいて計算されるが,この環境地図は再観測によって得られる追加情報に基づきダイナミックに更新され,新たな観測計画立案の契機となる.このようなリアクティブな観測プランニングにより,最終的に物体全体の形状を効率的に観測する手法を提案した.
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