知的統合システムでは外部からの入力信号や情報に基づいて制御や実行、判断が行われるので、その誤りによる影響を前もって評価することは重要となる。本年度は、入力情報の誤り可能性を考慮した安全性評価について、主に故障診断システムを具体的対象としてその評価法と診断手順の最適化について検討した。入力信号や情報の誤りにより生じる損失はその発生する状況に応じて異なる。誤り発生確率が大きいのでその入力信号や情報の誤り確率を小さくするというのではなく、システムに対する影響度の大きいものから順番に低減することがより重要となる。また、入力信号に基づいて診断や決定を行う場合も、入力信号の誤りの可能性とそれにより生じる損失をともに考慮して決定を行うことが重要である。そこで、システムの安全性評価で用いられている、事故頻度とその損失の積で表されるリスクの概念を用いた診断法と診断手順の構築法を検討した。診断システムとしては、オンラインで診断する場合と対話的に検査項目を一つずつ調べる場合に大きく分類して、それぞれ誤りにより生じるリスクの評価法とリスクを最小にする診断法を導出した。さらに、オンラインで診断する場合については、時系列的なデータが時事刻々更新されていく場合の診断法を同様に導出した。 一方、知的統合システムの挙動解析については、構成要素である機械要素、人間、環境などを統一的に表現する方法として、離散事象システムをモデル化するのに適しているペトリネットモデルを拡張して利用できる見通しがついた。
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