本年度は、前年度までに得られた研究成果を基に、知的統合システムの安全性評価法を総合的に検討した。 1.誤診断とそのシステムに及ぼす影響を考察するために、誤診断損失を評価規範とする故障診断手順の最適化法を提案した。これによりシステム故障を引き起こす最小カットセットを最短手順で見出すことができる。 2.エネルギーフローに注目したボンドグラフ解析法を用いた故障診断システムを提案した。この手法によれば、故障モードの影響を定性的にかつ定量的に評価することができる。 3.上述の原理に基づく故障診断システムをワークステーション上に構築し、本年度購入したパーソナルコンピュータをX端末としたオペレータ実験を行い、故障診断システムを安全性評価に適用した場合の問題点を検討した。 4.階層構造をもつ複数のオペレータによる意思決定問題を考察し、オペレータがあいまいな判断をした場合のチームとしての最適意思決定法を提案し、オペレータのあいまいな判断がチームとしてのパフォーマンスに及ぼす影響について具体的に検討した。 5.複数のオペレータが集団としての意思決定を行う方法として階層化意思決定法(AHP法)がある。この手法において用いられる一対比較行列に対する新しい整合性判定のための対数二乗誤差整合度を導入し、これを用いて、不整合な一対比較行列の対話的修正法を提案した。 6.複数のオペレータからなるチームによる作業を対象として、チーム行動におけるヒューマンエラーの伝播モデルを構築し、その評価法について検討した。
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