1983年日本海中部地震で発生した津波の到達時間について、当時実施された広範な聞込み調査の結果を入手し、詳細な再調査を開始した。特に、秋田県男鹿半島から、北の八森町へかけての地域に関し、重点を置いて整理を行なっている。1989年、1992年に太平洋・北米プレート間に生じた断層運動の観測値から、北日本サブダクション域では、一般に地震後に非地震断層運動が発生するらしいことが判明した。 たまたま、平成5年7月12日に北海道南西沖地震津波が発生したので、渡島半島西岸及び奥尻島において、津波の痕跡並びに到達時間などについて詳細な測定及び聞込み調査を行なった。また、断層パラメーターから決まる津波波源について、数値計算を実施し、両者を比較した。地震後5分足らずで津波の到達したといわれる奥尻島は、それ自身が地盤低下区域に入っているなど、断層運動南端の極近傍に位置しており、断層運動、地盤変動、津波発生の間に、夫々直接的な関係の存在することが確認された。 所が、余震分布の中央部に面している北海道本島西岸の瀬棚付近においては、体験された津波が地震発生後5分から8分程度で到達している事が明かとなったにも関わらず、地震で決まる断層位置から津波が来るとした数値計算結果では、どんなに速くても11分は必要で、体験されたものと6〜3分の違いが生じた。これは、本震とは直接関係の無い津波発生原因があったとしない限り説明できない。原因として、(1)本震発生前に地震を伴わない地盤変動が先行した、(2)地震によって断層位置より岸寄りの海底勾配の急な地点で大規模な地滑りが起り津波を発生させた、などが考えられる。ここでも、地震動と直接関係の無い津波が存在した可能性が極めて強く、その詳細な検討の必要性が認められた。
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