本研究の目的は次の4項目であった。 ◎火砕流の発生前に溶岩円頂丘ではどのような事象が起こるか画像記録に捕らえること。 ◎噴火開始当初からの火砕流発生機構の長期的な変動を解析すること。 ◎研究機関において実施可能な範囲で堆積物の堆積構造・層序と分布について地質学的な調査をすること。 普賢岳の先史時代の火砕流及び他の活火山の同じ型の火砕流との比較研究を行い、溶岩円頂丘崩落型の火砕流発生と分布の特性を明らかにして災害の評価に資すること。 以下に各項目の研究実績の概要を記す。 1.画像記録:合計28回の火砕流について、その発生前後に発生源で起こる事象を精度の良いズ-ム画像に捕らえた。この画像を解析することにより、ドーム崩落型の火砕流の発生機構について従来より詳しい精度でモデルを構築した。 2.長期的な変動:九州大学島原地震火山観測所から火砕流発生に伴う震動波形のデータベースの提供を受けて、溶岩ドームの成長過程と火砕流発生機構との対応を検討した。 3.堆積構造・層序と分布:研究期間内には火山活動が依然継続中であり、危険性を伴うため、この項目については一部に予察を行ったのみであり、特に実績はない。 比較研究・災害の評価:主に文献評価によって日本の第四紀火山の小規模火砕流のデータベースの構築を試みた。最近1万年の間に0.1km^3以上の規模の火砕流は1000年に約2回起こっていること、0.01km^3未満の規模の火砕流で、2000年前以前に発生したものは地質記載から欠落していると見られることが判明した。
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