研究概要 |
現有の超高真空電子ビーム蒸着装置に新規購入したイオン銃を装着し、フロートガラス、超精密研磨ガラス等の基板上に重元素(Pt,Rh,Cr)と軽元素(C)を交互に周期的に積層することによって多層膜反射鏡を製作している。その際、高い反射率を得るために、イオン銃で蒸着面を平滑化し、界面の粗さを極力小さくすることを試みているが、まだ、十分な効果は得られていない。また、基板と多層膜の密着性を良くするために、その間にbaffer layerとしてCrを挿入したところ、その厚さが50A程度が最適であり、それ以上にすると反射率が減少することが明らかになった。これは界面構造の形成過程の問題であり、実験によってその解明を試みている。これまでにPt/C(2d=80A,N=20及び2d=100A,N=10)を成膜した多層膜反射鏡とラミナー型回折格子(刻線数500,1000本/mm)を製作した。そのX線光学特性(反射率、波長分解能)を、特性X線(Cu-Kα(8.04keV),Al-Kα(1.49keV),C-Kα(0.28keV)を光源とする反射率測定装置によって評価した。その結果、Cu-Kαで反射率20%、波長分解能140以上が得られた。これは十分実用化できる性能であり、宇宙観測あるいはプラズマ診断のための分光器の設計を進めている。また、ラミナー型回折格子に多層膜を成膜したときの表面構造を調べるために、STMによる測定も行なっている。イオン銃による平滑化の最適条件は、まだ、十分に詰められていないので、引続き来年度も実験を進め、一層の性能向上をはかる。
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