研究概要 |
非中性陽電子プラズマの特性の研究は反物質の集団挙動を調べることできる数少ない手段である。実験的に陽電子プラズマを作るためには,大量の低エネルギー陽電子を限られた空間内に閉じ込めるが必要とする.本研究では,低速陽電子の線形加速器を使った大量発生,その再減速,長時間閉じ込め,集団挙動の励起・観測が実験の主課題となる.これらに関して以下の成果を得た. 1.低速陽電子を,LINACと開発した「光子・陽電子変換器」を組み合わせ,時間平均発生率を1.5X10^<10>[e^+/s]に上げることができた. 2.再減速器に後方散乱型Ar固体薄膜を用いて7eV以下に冷却したあとと磁場と静電場で捕捉する方法で,数eVの陽電子を6X10^7[e^+/s]の時間平均率で発生して閉じ込めることを可能にした. 3.この方法で蓄積した低温陽電子群はプラズマの要件を満たし,陽電子プラズマを形成することができたと言える. 4.高密度陽電子を安定な剛体回転平衡状態に閉じ込めるために,多電極型静電場トラップを開発して,その特性を検証した.この方法を超高磁場(≦8T)と組み合わせて電子の閉じ込め時間を3000秒に延長することができた. 5.超高磁場内での電子のサイクロトロン放射冷却を観測し,ほぼ理論値に一致することを確認した.放射冷却した電子プラズマとのクーロン相互作用で陽電子の減速冷却をする高効率減速機構を考え,現在,この機構を利用した陽電子プラズマの形成の実験を続行している.この方法は,極微量の陽電子放射同位元素を用いて,陽電子プラズマの詳細な集団運動の研究を可能にする.
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