本研究は、核融合炉材料の中性子照射試験において重要な相関指標となる中性子源スペクトルを高精度・高分解能・高効率で連続的にモニターするのに適した新方式の検出器開発を目的としている。測定原理は、中性子との弾性散乱で生じる反跳核をカウンターテレスコープ方式で検出するものであるが、中性子源ビームに対して、反跳核放出用の薄膜を平行に置くこと、その両側に中性子ビームから遠く離して反跳核(荷電粒子)検出器を配すること、途中に細径・多孔の反跳核プリコリメータを設けて立体角を絞ることの3点の新アイデアを導入し、通常相反する高エネルギー分解能性と高検出効率の両立、反跳核検出器の耐放射線性の確保、コンパクトな検出器系の実現を図っている。本アイデアの原理と有効性を実証するため、まず、核融合材料照射試験装置で想定される主要な中性子エネルギー領域(1MeVから〜50MeV)の中性子に対して、検出器応答関数を計算するコードを作成した。特に、本検出器の主構成要素である反跳核プリコリメータ内の荷電粒子エネルギー損失や反跳核薄膜への中性子入射角度依存性なども考慮される。次に、本計算コードによる設計結果の妥当性を評価するため、14MeV中性子に対する反跳陽子検出に関して、機械加工で自作できる範囲の種々の立体角の反跳陽子プリコリメータを用いた原理実証用検出器を試作し、加速器中性子源による性能評価実験を行った。その結果、実験と計算は良好な一致を示し、検出効率及びエネルギー分解能に寄与する個々の要因を定量的に評価することができた。また、目標性能を実現できる〜100μm級の反跳核プリコリメータの製作に関して、種々の微細加工技術を検討し、放電加工により技術的に可能であることを部分試作により確認した。さらに、本計算コードを用いて、より高エネルギーの中性子測定に適した検出器構成(重粒子反跳やエネルギー選別フイルター利用)の設計検討も行った。
|