レーザー核融合においてブレークイーブンを達成するには流体力学的に安定し、球対称性に優れた爆縮を行う必要がある。このため申請者はX線画像計測を用い、爆縮途上にあるペレットの空間球状を観測し、爆縮の安定性に関する物理の解明を進めている。このX線画像計測では高い時間(20ps以下)、空間分解能(5μm以下)のみならず高いスペクトル分解能が要求される。この画像計測法を実現するため、平成5年度科研費補助をもとに二次元弯ブラック結晶を用いたマルチチャンネルX線単色カメラを作成した。更に爆縮燃料ガス中心にシードガスを微量混入させ、断熱圧縮されて高温になったシートガスから放出された特定の線スペクトルのみからなるX線単色画像を得ることに世界で初めて成功した。具体的な成果を列挙すると (1)X線モノクロカメラ(2チャネル)を製作した。 爆縮プラズマ観測用のシードガスとしてArを選び、このArから共鳴線(Ar+12 Heβ、A+13Lyβ)の2波長それぞれの単色画像を得るべく、Si(311)、Ge(311)の2次元弯曲結晶を製作し、光軸調整を合理化した新案の結晶ホルダーに組込んだ。 (2)X線駆動型爆縮Arコアプラズマの観測に成功した。 阪大レーザー研・激光XII号ガラスレーザーシステムを用い、X線駆動によりドライブされた燃料ペレットを爆縮して、Arコアプラズマを作り、分光画像(時間積分)を得た。燃料ペレットに施したアブレータ層の厚さを変えることにより、温度、密度の異なったプラズマを観測対象とした。得られた画像は良好であり爆縮コアーの温度マッピングを得るべく、現在この実験データの解析を進めている。本研究は平成6年度へ継続する見込みである。
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