研究概要 |
本研究では下記3課題について検討した。 1.SO_2の硫酸粒子生成機構の解明とSO_2→H_2SO_4転換速度の決定: 新たに製作した流動型小型チャンバーを用い,各種SO_2濃度,湿度条件下で,SO_2から生成する粒子の物理・化学的性状を測定し,粒子生成特性を調べた。またPXIE分析を応用しSO_2→H_2SO_4転換速度を求めた。さらにDMS(Dimethyl Sulfide)についても同様な実験を行った。SO_2/清浄空気系からの粒子生成能は高く,粒子転換速度は約10^<-2>h^<-1>であった。DMSのそれは約10^<-4>h^<-1>で2桁小さく,粒子生成は不安定であった。 2.雨によるエアロゾル粒子の洗浄効果 新たに製作した雨水連続採取装置,自動大気粒子捕集装置を用い,各種環境条件下で雨水,大気粒子試料を採取し,溶解性・不溶性成分に分離後,PIXE分析,IC分析を行った。雨水は0.1mm単位で採取し,降水量に伴うイオン成分,元素成分濃度の変動特性,雨水洗浄機構について検討した。土壌起源性のFe,Si,Tiはその多くが不溶性成分として,一方S,Clはそのほとんどが水溶性成分として雨に取り込まれる。降雨開始後約0.5mmまでに雨による洗浄作用は著しく減退する。 3.大気汚染物質の降雨洗浄モデルと輸送シミュレーションモデル: 雨による粒子の洗浄モデル,およびSO_2→SO_4^<2->粒子転換,酸性沈着を含む大気輸送モデルを作成し,降雨過程に及ぼす諸因子の影響ならびに大気輸送中における粒子生成や沈着の粒子濃度に及ぼす影響について検討した。硫酸塩粒子のような人為起源主体の微粒子は,自然起源粒子に比べ雨により除去され難い。 なお,Univ.California,Davis原子核研究所,ウィーン大学実験物理学科,東亜大学環境工学科と降水や大気エアロゾル試料の採取等を通し,酸性雨,酸性沈着研究のための共同研究を行った。
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