本年度は、二酸化炭素の大気-海洋間の交換量をバルク法で測定するために、海水中二酸化炭素分圧(pCO_2)の自動測定器の開発に精力を集中した。pCO_2の測定器は、海洋観測指針に示されているように、海水と気-液平衡にあるガスをガス分析計で測定する方法が一般的である。しかし、実際に使用されている測定器では、常に新しい海水が平衡器内に取り込まれているために、海水と循環しているガスとの間の平衡に問題がある。また、ガス分析計の測定回路が閉鎖系になっているため、循環しているガスが加圧し、測定誤差を生じる。このような欠点を克服するために、我々の試作器では、開回路のガスサンプリング方式を採用し、海水と気-液平衡になっているキャリアーガスの分圧を測定することにした。試作器は、繰り返しの測定精度が約2μ atm(変動係数約0.6%)であり、20分間隔でpCO_2を自動測定することが可能である。この試作器の性能は、pCO_2の測定に十分適用できるものである。試作器を岡山大学理学部附属臨海実験所の施設に設置して、瀬戸内海におけるpCO_2の変化の特徴を定期的に観測した。pCO_2は昼間低く、夜間高くなるような日変化を示した。また、pCO_2は夏季に高く、冬季に低くなる季節変化も示した。これらのpCO_2の性質は、海洋学会誌に報告している。本年度の研究経過は、当初計画どうり順調に推移している。また、次年度の研究活動を効率よく実施するために、京都大学防災研究所附属白浜海象観測所や大潟波浪観測所等の視察を行なった。現在、渦相関センサーである二酸化炭素変動計と超音波風速計の整備を行っている。
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