昨年試作した海水中二酸化炭素濃度測定器は、分解能が0.5ppmであり、試料海水の温度制御に問題が残されていた。そこで、本年度の初め、A/D変換器を16ビットに改めると共に、キャリアーガス発生範囲が狭くなるように信号処理プログラムを変えた。また、平衡器の試料海水が入る部分の周縁に海水の循環経路を取り付け、測定中における試料海水の温度変化を小さくするようにした。このような改良の結果、海水中二酸化炭素濃度測定器は、分解能が0.1ppm、試料海水の温度変化が0.02℃以下に抑えることができた。 1994年6月、米国Scripps海洋研究所で世界中の海水中二酸化炭素濃度測定器の比較観測が実施された。測定値は互いによく合っているのもあったが、20ppm位異なっているのもありまちまちであった。測定値に熱力学的な補正を行った結果がScripps海洋研究所のDickson氏から報告されることになっている。しかし、我々の測定器は、少量の試料海水で海水中の二酸化炭素濃度が測定できるという特徴があるために、参加した人々に大きな興味を持たれた。 1994年8月、京都大学防災研究所附属白浜海象研究所の観測鉄塔を利用して、二酸化炭素の大気-海洋間の交換量を渦相関法、空気力学的傾度法、バルク法で測定した約0.03ppm ms^<-1>の割合で二酸化炭素が海洋から大気中に放出されていることがわかった。これら本年度に得られた成果は、海洋学会誌等に報告されている。
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