研究概要 |
大気中の二酸化炭素濃度が着実に増加している。大気中の二酸化炭素濃度は,二酸化炭素の大気-海洋、大気-植物間の交換のバランスによって決まる。本研究の目的は二酸化炭素の大気-海洋間の交換量の気象学的な測定法を確立することである。京都大学防災研究所附属白浜海象観測所と岡山大学理学部附属臨海実験所の施設を利用して得られた主要な研究成果は以下の通りである。 渦相関法によって測定したCO_2フラックスの平均値は約0.10±0.09mgm^<-2>s^<-1>であった。この値は日本海海面上でのCO_2フラックスの値と同程度であるが,生育の盛んな水稲群落上での下向きのCO_2フラックスの約1/10である。また,渦相関法で測定したCO_2フラックスは,空気力学的傾度法で測定したCO_2フラックスが妥当であることを示した。 (2)バルク法の確立のために開発したpCO_2測定器は,150mlの試料海水で20分毎にpCO_2を測定することができる。測定精度は約2ppmである。 (3)瀬戸内海の海水中のpCO_2の温度係数と塩分係数はそれぞれ約4.5%pCO_2/℃と44ppm/塩分単位であった。 (4)pCO_2は昼間に低く,夜間に高い日変化を示した。このpCO_2の日変化は,主に,海水中の植物プランクトンの光合成活性に起因している。 (5)二酸化炭素の大気-海洋間のフラックスは小さく,それによるpCO_2の日変化への影響は1ppm以下であることがわかった。 (6)pCO_2のデータは,夏季に高く、冬季に低い季節変化を示した。季節変化の振幅は約150ppmであった。この振幅の季節変化は海水温度の2乗に比例している。大気中のpCO_2と比較すると,海水中のpCO_2は6月から11月にかけて高く,CO_2が海水中から大気中に放出されており,逆に、12月から3月にかけては低く,CO_2が大気中から海水中に溶け込んでいる。
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