研究概要 |
副腎皮質細胞における細胞刺激の情報伝達の初期過程を、微弱なカルシウムシグナルをfura-2の蛍光強度の変化を追跡して顕微蛍光断層撮影で二次元分布を可視化した。(1)アンジオテンシン II、ATPなどを作用させた所、これらがレセプターに結合して情報が伝わり、細胞質のカルシウム濃度が変化するのを測定することに成功した。(2)KClを副腎皮質細胞に作用させて電位依存性のCaチャンネルを開けることにより、レセプターを介しない細胞外Caの細胞内への流入をfura-2の蛍光強度の変化として画像的に捉えることに成功した。これら(1)(2)は単一の副腎皮質束状層細胞を用いては初めての観測成功例である。 これらの初期過程に続いて起こるステロイドホルモン合成過程において、中心蛋白であるP-450の回転運動を測定することによって、以下のことを明らかにした。(1)ACTHを投与したラットから副腎皮質ミトコンドリアを単離して、P-450scc・COのフラッシュホトリシスで見ると、コレステロールが移動してP-450sccに結合したことがわかった。(2)副腎皮質ミトコンドリア内膜を調製して、アドレノドキシンの運動の変化やP-45sccの回転運動変化から、アドレノドキシンはアドレノドキシン還元酵素とP-450sccの間をシャトルして電子を伝達することが結論された。(3)ミクソソームの2種類のP-450(P-450C21,P-45017α)をリポソームに再構成してP-450還元酵素との相互作用を調べ、P-450C21は還元酵素と一時的に複合体を作り電子の授受を行うのに対し、P-45017αは還元酵素と完全に独立に運動しており、衝突によって電子の受渡しを行うことがわかった。
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