本研究は、超音波診断法の簡便性、繰り返し検査可能性などの特色を生かして、体内臓器の3次元形状などのデータの取得と表示を行う、多次元超音波臓器形状ビジュアライゼーションシステムを開発しようとするものであった。超音波診断装置を用いることにより、種々の断面の体内断層像を取得することは容易であり、それらを組み合わせることにより、体内形状などの3次元的なデータを取得することができる。このようなデータを臨床現場で有効に利用するためには、多次元イメージデータ処理を高速にインテリジェントに行うシステムを開発することが必要である。本研究では、3次元体内データの取得を超音波診断装置およびプローブ位置情報計測システムと組み合わせて行うシステムの開発と多次元データの表示システムに関する検討を行った。まず、超音波プローブに、磁気を用いた空間位置センサを取り付けることにより、プローブの操作性を損なうことなく、画像の空間内での位置を取得し、入力画像をそれらの位置データを基に3次元データ空間に蓄積し、3次元データを作成するシステムを構成した。また、3次元データを高速にハンドリングするための3次元メモリシステムを作成し、3次元メモリに格納された3次元画像データに対し、座標変換、深度画像(3D画像)の作成などを高速に行うハードウェアを開発した。これにより、任意の実体像・断面像を高速に作成することが可能となった。さらに断面の位置や方向を変更しながら実体像、断面像の作成、表示を繰り返すことによって、3次元画像の全体的な形状や内部構造を容易かつ短時間に把握するための表示システムとして有効であることを確認した。今後は、3次元超音波断層像の取り込みシステムと3次元メモリシステムを結合させ、非侵襲で手軽な検査装置である超音波断層装置による3次元断層像の観察システムをより簡便に使用できるものとする必要があろう。
|