ピンオンディスク摩擦試験機を用いて柔らかい材料(シリコンラバー、ポリウレタン、ポリビニルアルコール・ハイドロゲル)と硬くてなめらかな材料(ステンレス鋼、アルミナセラミック、石英ガラス)との摩擦、潤滑特性を調べた。その結果、疎水性材料では起動時に大きな摩擦が生じることがわかった。起動後は低ヤング率材料では摩擦は低いが、表面粗さの影響がみられた。起動時の摩擦には試験前の荷重下での静置時間と関節液成分の影響が見られた。 プラズマ処理によってポリエチレンの表面の親水性を高めた結果では起動時の摩擦がかなり減少した。しかし荷重下で長時間静置した後には親水性の影響は見られなかった。 長時間股関節シミュレータを用いて歩行時にすきま部に発生する流体圧力を測定した結果、低ヤング率材料を用いるソケットの場合にはかかとの着地時に荷重の大部分が流体圧力で支えられることがわかった。摩擦トルクの測定によれば疎水性材料のソケットでは親水性ソケットの場合よりも歩行周期全体を通じて摩擦が高かった。荷重が高いときには摩擦係数は低かった。これは人工股関節においてスクイーズ膜効果が存在することを意味している。 ポリエチレン高含水ポリビリルアルコール・ハイドロゲルでは、接触圧力が高い高荷重下では凝着により摩擦係数が高かったが、荷重の低下につれて摩擦が減少した。この材料を人工関節に応用するときには良好な潤滑状態に保つ必要がある。
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