研究概要 |
モーションアーチファクトの理論的解析を行った.まず移動する被写体を想定した被写体検出器-装置モデルを本件級で購入したワークステーション上に具現化した. 点または直線被写体がスキャン中心に対して回転運動をする場合に発生するモーションアーチファクトを計算機シミュレーションによって解析した.まず点源をスキャン中心に一定半径,一定速度で回転させるとき,それによる再構成像(ぶれ像)は内(外)サイクロイドと呼ばれる平面曲線を描くことがわかった.その形状を数式的に与えることも可能である.この結果,実際のCT像に,被写体の動きによって“弧"あるいは“尖点"などのアーチファクトが発生する.特に尖点状アーチファクトは弧などのそれに比べて著しく濃度(階調)が高いことがわかった.回転する点源について生じるアーチファクトをもとに,回転する剛体の再構成像に生じるアーチファクトを得ることができた.それはストロボスコープ像と呼ばれ,現実の超高速X線CT装置で観測されるアーチファクトの一種であることが判明した.この医学臨床でしばしば診断を混乱させるアーチファクトがストロボスコピック像であることが判明したのは大きな成果である. また,直進する点源に対して生じるアーチファクトについても解析した. 被写体の動き(速度,変位,方向等)をパラメータとするアーチファクトの発生状態,形状の体系化がある程度進展した.しかし,現在は平行投影で考察しており,われわれの問題を市販のスキャナーで使われている扇状投影方式の場合に変更する必要がある. 本研究により,アーチファクトの形状は,被写体の動きの方向や初期位置に大きく影響される.また異なる2つの点源の動きが同一のアーチファクトを与えることも判明した. 以上の結果により,画像上のアーチファクトから逆に被写体運動に関する情報も得られる.
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