太陽系における地殻進化の過程を、地殻の主要構成鉱物である斜長石の微細組織の系統的研究により明らかにした。太陽系における最も始源的な地殻をユ-クライト隕石に代表させ、やや進化しその途中過程で進化を停止した天体の地殻を月高地の斜長岩に代表させた。更に進化した惑星が地球であり、既に大半が失われた初期地球地殻を太古代斜長岩に代表させた。これらの隕石及び斜長岩中のCaに富んだ斜長石について、プリセッションカメラやギニエカメラにイメージングプレートを装着し高感度・高ダイナミックレンジのX線回折実験と高分解能分析電子顕微鏡実験を行った。その結果、斜長石の示す反位相領域であるCドメインの形状とサイズが系統的に変化していることを見出した。特に、多様なユ-クライト隕石の中で集積岩的組織を示す隕石群の冷却過程を明らかにした。また地球太古代斜長岩中に斜長石の分化過程に新たな知見をもたらすCaとKの離溶組織を高分解能分析電子顕微鏡を用いて世界で初めて発見した。さらに地球地殻にのみ存在すると考えられる物質進化過程である風化について研究を行った。風化は地球形成初期から現在に至るまで進行している物質進化過程であるが、太古代斜長岩中の風化鉱物に着目して、地球初期の風化過程を研究した。風化過程において緑泥石や緑簾石が斜長石の特定の方位に形成されているが、その微細組織の研究から形成温度や化学的な環境を決定し、グラフエピタクシーの概念を適用して形成のメカニズムをも明らかにした。また斜長石の風化実験を特定の方位に切り出した単結晶の斜長石について行い、結晶構造、微細組織と風化の進行過程との関係を研究した。
|