鉱物の組み合わせや鉱物の組成は温度や圧力などの物理条件が一定の時は母岩の組成に支配されることが良く知られているが、混合層鉱物の生成を母岩の化学組成との関係で考察されたものがほとんどない。 これに関係するいくつかの研究があるが、世界の泥岩中の続成作用でできたイライト/スメクタイト混合層の化学組成や層電荷は、比較的良く似ていると述べている。このことは、世界の砕屑性堆積物の化学組成が似ており、そこからできるイライト/スメクタイト混合層の化学組成が似ていること示している。また、SiO2活性度がイライト化に関係があると報告している。 これまでの研究で我々も、同じ層準で泥岩中のスメクタイトの方が砂岩中のスメクタイトよりイライト化がわずかに速いことを確認した。しかしながら、東頚城ボーリング試料を見るかぎり、砂岩と泥岩のSiO2量に違いはみられない。Altaner(1986)は、K-長石からのKの溶脱は、イライト化にともなうKのスメクタイトへの固定に比べ、はるかに大きいことを報告している。このことも、堆積物の粒子の大きさより鉱物の組み合わせが重要である事を示唆する。 これらの結果と本研究の結果から考えると、新潟平野ボーリング試料と東頚城ボーリング試料の化学組成の違いは小さく、イライト化に重大な影響を与えていないように見える。深度増加にともなう温度の増加と、反応が進む継続時間の方が、イライト化進行にとって重要だと考えられる。また、東頚城ボーリング試料の砂岩と泥岩の化学組成はほとんど同じことから、砂岩と泥岩にイライト化進行の違いを認めるとするなら、源岩の化学組成の違いでない別の要因を考える必要がある。このため、スメクタイトからイライト化にともないKの供給物として、K-長石、火山ガラスや黒雲母の表面がどのように溶脱していくのかを詳細に検討をする必要がある。
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