火山ガスから放射された赤外光を赤外望遠鏡で集光したのちフーリエ変換赤外分光光度計に導入し、スペクトルを得るシステムを作成した。なお、赤外望遠鏡は5ミリラジアンの視野角をもつカセグレン型を採用し、赤外光の検出にはMCT検出器を用いた。まず、SO_2やHClなど火山ガスを構成する主な化学種の振動、回転スペクトルを、これら化学種の標準ガスの吸収スペクトルを測定して求め、作成したシステムの検出下限、定量性、分光干渉などの分光学的な特性を実験室内の実験で調べた。また、火山ガスのように水蒸気を主成分とするガスのスペクトルの中から少量成分であるSO_2やHClなどのスペクトルを同定し、その量を算出する方法を検討した。その結果、観測されたスペクトルを、HITRANデータベースを用いて作った合成スペクトルで非線形最小自乗法によって回帰する方法がうまくいくことが分かった。 1990年以来噴火が続いている雲仙火山において、火山ガスが噴出している溶岩ドーム付近から水平距離で1300m離れた地点に本システムを設置し、火山ガスから放射されるの赤外光のスペクトルを測定した。色々な測定を試みた結果、冷えきっていない溶岩魂を背にして手前側のガスを測定するとSO_2やHClの吸収スペクトルが得られることが分かった。溶岩ドームの熱が赤外光源となり、火山ガス中で構成成分によって吸収を受け、観測点に届くことを示している。この結果は、火山ガス中のHClを遠隔測定で検出した世界で最初の測定であり、本方法が新しい測定法として有望であることを示している。
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