1.火山ガス化学組成を遠隔測定するため、火山ガスから放射される赤外光を赤外望遠鏡で集光したのち、フーリエ変換赤外分光計に導入し、赤外スペクトルを得るシステムを開発した。望遠鏡は5ミリラジアンの視野のカセグレン型を使用し、分光器は波数分解能1cm^<-1>の装置を用いた。 2.作成した装置を火山ガスが見える現場へ運び、試験的な観測を行った。すでに火山ガスの観測を実施した火山は、雲仙岳、霧島山、桜島、九重硫黄山、浅間山の各火山に加え、イタリア・ブルカノ火山である。とくに雲仙岳では活動監視のため、くり返し観測を行った。 3.観測の結果、火山ガスが放出している背後に赤外光源がある場合、火山ガス成分による吸収スペクトルが得られることが分った。雲仙火山の場合、溶岩ドームの熱が赤外光源になり、その手前で出ているガスの赤外スペクトルには、SO_2とHClの吸収が見られた。ちなみに、火山ガス中のHClのリモートセンシングによる検出は、本研究が世界最初である。本方法では、視野方向に存在するSO_2やHClのカラム濃度を測定できるが、火山ガス中の各成分の絶対濃度は分らない。しかし、SO_2/HCl比が求まるので、この比の値をモニタリングに使うことができる。このほか、阿蘇火山では、火口底にたまっている熱湯を赤外光源として、火口内に充満しているガスの吸収スペクトルを得ることができ、ブルカノ火山では、高温噴気が出ている地表の熱を赤外光源として噴気の吸収スペクトルの観測ができた。 4.本方法では、火山ガスが大気へ拡散してからのガスを測定しているので、噴気孔内の組成から変化する。とくにH_2Sは大気中でSO_2に酸化されていることを実験的に確かめ、遠隔測定で検出されるSO_2は、H_2Sの酸化分も加わっていることが明らかになった。
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