研究概要 |
本年度は標記研究課題実施の初年度にあたることから、まず具体的な研究計画の策定を行い、次いで予備的研究を実施しながら、同時に研究環境の整備にも重点をおいた。 まず、今後の研究を円滑に、かつ実り多いものとするために、研究対象試料である隕石の収集を行った。具体的には分析対象とする隕石を選定し、複数の博物館、国立極地研究所、NASA等に試料請求を行った。現在のところ、必ずしも充分でないまでも、当面の研究を行うために必要に試料を入手することができた。これらの試料については、その全岩試料の化学組成を調べるために、非破壊の中性子放射化分析(機器中性子放射化分析,INAA)と中性子誘導即発gamma線分析(PGA)を実施した。また一部試料については希土類元素存在度を精密に求めるために、同位体希釈質量分析法を実施した。しかし、これに関しては、現在、他大学の機器を借用して実施しており、必ずしも満足の行く状況ではない。隕石試料中の希土類元素存在度の精密測定は研究分担課題の1つであることから、このような状況を改善すべく、研究環境の整備を行った。その主要な点は、本研究室所有のICP質量分析計の高感度化で、本年度の設備備品で購入したターボ分子ポンプはそのために設置したものである。その結果、隕石全岩試料の分析に対応できる段階まで分析感度が向上し、今後隕石試料の分析に適用できる見込みが得られた。さらに、放射化学的中性子放射化分析法による隕石試料中の微量白金族元素の定量法について検討し、いわゆるルーチン分析に適用できることが明らかとなった。 これまでの成果に関しては、分析化学関係の論文誌に発表済みか、発表予定である。次年度以降はこれらの分析法を実際に隕石試料に適用し、すでに得られている結果とともに宇宙化学的議論を展開させ、その成果を逐次報告する予定である。
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