研究概要 |
「平成5年度」 分子内励起状態プロトン移動とその溶媒クラスターの効果を検討した。即ち、無極性溶媒中で分子内励起状態プロトン移動の観測される化合物としての3-hydroxychromone(3-HC),3-hydroxyflavone(3-HF),3-Hydroxy-2-naphthylchromone(2-NHC)は、それぞれの化合物により励起状態プロトン移動速度が著しく異なることを、筆者は以前報告した。しかし、その原因について世界的に議論され、さらにプロトン移動の速度にたいする分子間水素結合の効果が問題となってきた。そのため、本研究では超音速ジェット中これらの化合物の励起状態プロトン移動を検討した。即ち、これらの化合物では2位に置換基の性質によりプロトン移動速度が、ピコ秒以下から10ピコ秒程度まで変化することが明かとなった。本研究で水分子やアルコール分子とのクラスターを生成し、プロトン移動を検討した結果、分子間では励起状態プロトン移動が全く起こらないことが証明された。 「平成6年度」 メチレン鎖末端にアントラセンとp-N,N-ジメチルアミノフェニル基をもつ分子内EDA化合物は、超音速ジェット中で分子内励起状態電荷移動錯体(エクサイプレックス)を生成する。本研究では、種々の分子内EDA系について検討した結果、振動エネルギー依存性はアントラセンの置換位置およびp-N,N-ジアルキル基により著しく異なることが明らかとなった。また、meta-N,N-ジメチルフェニル基をもつ分子内EDA系では、基底状態で二種類の構造異性体が存在することが、蛍光のホールバーニング分光により明かとなった。これらの構造異性体からのエクサイプレックス生成の振動エネルギー依存性が著しく異なることが明かとなった。
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