新しい星間分子の候補となるフリーラジカルや分子イオンの回転スペクトルを感度良く検出するために、ミリ波領域で動作するフーリエ変換分光器の開発を行なった。 ミリ波のソースとして、50GHz以下の周波数では15-20GHzのシンセサイザー出力の2逓倍波を、それ以上の周波数ではガン発振器を用いた。後者の周波数安定化のため、位相ロックのシステムを組んだ。ミリ波をファブリー・ペロ-共振器に結合する方法が難しく、同軸アンテナやカップリングホールなどを試みた。しかし、広い周波数帯域にわたって良好な結合を得るには至らず、一応の動作を確認したに止まっている。カップリングホールの形状が重要であることがわかり、今後、それを最適化することにより、実用的な分光器として確立できる見通しが得られた。 フリーラジカルや分子イオンを生成するために、噴射ノズルの先端に電極を取り付けて放電させることのできる装置を製作した。その結果、C_3S、C_3H_2などの不安定分子のスペクトルは非常に強く観測され、また、環状C_3H、CCS、SOなどのフリーラジカルのスペクトルも感度良く検出できるようになった。この際、フリーラジカルのスペクトルは地磁気で分裂するので、3方向のヘルムホルツコイルを置いて、その影響を除去するようにした。 以上と平行して、既設のミリ波・サブミリ波分光器を用いて、星間分子や星間分子の候補となる分子の分光を進めた。具体的には、C_2H_2Si、C_3Hの振動励起状態、C_2Hの電子励起状態について、詳細な研究を行なった。またNRAOの12m望遠鏡を用いて、H_2CNを星間分子としてはじめて検出した。
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